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令和5年 第72回秋季県展 会員優賞

jps-shikoku


リラの愛傷譜



「約束」 宮﨑和香


「私、絶対秋の県展は先生のことを作品にするね!」そう伝えたのは5月の頃でした。

その3日後にその言葉を聞いた私の大好きな先生は天国へ旅立ちました。

私の作品作りのテーマは、いつも前向きで、いつも何かを伝えたいというものばかりでした。もちろん今回も予定ではそういったテーマで制作したかったけれど…できませんでした。

自分でも驚くほど辛く、深い悲しみに暮れ、生きることに何の喜びも感じずにいました。でも作品を作ることは先生と約束していたので、この想いを形にすることが私の使命だと思って必死に自分の心と向き合いました。

それが「リラの愛傷譜」です。

5月の花、ライラックはフランス語でリラと言います。傷ついた私を優しい香りで包んでくれています。ひらひら舞うリラの花が、まだ声に出しては歌えない私の代わりに歌ってくれているように愛傷譜としました。月から伸びる手は優しく私を包んでくれているようにも見えますが、もう一度触れられるものならば…という私の願いでもあります。


約束はしていたものの、無我夢中で一番辛い時期に自分の心と向き合えたのも、このテーマだったからだと思います。そしてこうして形にでき、賞もいただくことができて、制作するというエネルギーはこんなにも自分を救ってくれるのだと改めて感じるものとなりました。

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©nihon hangakai shikoku shibu.

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